フォーラム・ポーランド Forum “POLSKA”

2006年度会議 「ポルスコシチ――ポーランド的なるものをめぐって」


 

「ポーランドの自然保護に見るポルスコシチ」

 

神崎伸夫(共生科学研究・東京農工大助教授)

 

ポーランドは世界的に見ても進んだ野生動物管理システムを持つ国である。西ヨーロッパの国々が失ってしまった動物、例えばオオカミ、リンクス、バイソンなどが健全な状態で生息している。自然保護の歴史を振り返ってみると、そのような考え方が発達するのは、経済が発展しており社会的にも安定している場合が多い。しかしポーランドでは困窮している時期や政治状況が悪化している時にも、着々と新しい自然保護制度を導入している。例えば、バイソンの保護活動を始めたのは第2次世界大戦が終わってすぐのことである。なぜこのようなことが可能なのかについて考察したい。またソ連の崩壊とEU加盟はポーランドに大きな変革をもたらしたが、その影響は野生動物管理システムにも及んでいる。隣国のスロバキア、ウクライナの状況も紹介しながら、Carpathian山脈に生息する野生動物の今後についても考えてみたい。

 

報告資料

 

【プロフィール】

東京農工大学大学院助教授

筑波大学生物学類卒業、東京農工大学大学院農学研究科修了農学博士。専門は大型哺乳類を中心にした野生生物の保護と管理。1996年から97年にかけて文部省在外研究員として、Jagiellonian大学に滞在する。調査地はポーランド南東部、ウクライナ、スロバキアにまたがるCarpathian山脈で、オオカミなどの肉食獣と、シカ、イノシシなどの草食獣の関係を研究している。また社会制度の変化が狩猟制度、野生動物管理制度が与える影響についても追跡している。東京農工大学はJagiellonian大学と姉妹校提携を結んでおり、農工大側の代表を務めている。ポーランド科学アカデミー国際生態学研究所の研究者とも共同研究を行っている。今年度も12月と3月に訪問する予定。

 

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