フォーラム・ポーランド Forum “POLSKA”

Konferencja 2005: “Powrót do Europy

2005年度シンポジウム「ヨーロッパへの回帰」報告要旨・資料


 

「サルマチア――《ヨーロッパ回帰》と《ヨーロッパ化》のあいだ」

 

小山哲(京都大学大学院文学研究科助教授)

 

 東中欧諸国のEUへの統合は、EU側からは「ヨーロッパの拡大」として、新たに加盟する当事者の側からは「ヨーロッパへの回帰」として、しばしば語られる。「外への拡大」と「内への回帰」というふたつの表現の意味のずれの背後には、「ヨーロッパとは何か」、「どこまでがヨーロッパか」というヨーロッパの境界線とアイデンティティをめぐる問いが潜んでいる。この問いそのものは、歴史的にみて、けっして新しいものではない。ポーランドは、その歴史のなかで、自らをヨーロッパ世界のなかにどのように位置づけるかという問題をめぐって自問自答を繰り返してきた。「サルマチア」という地名は、ポーランドのヨーロッパへの帰属を主張するためにルネサンス期の人文主義者が考え出したひとつの解答であった。しかし、バロックの時代に、「サルマチア」は、むしろヨーロッパとの異質性を強調する表象に変質していく。

 この報告では、「サルマチア」概念の変遷の過程をたどることをとおして、ポーランドにおける「ヨーロッパ」意識の歴史的特徴に光をあててみたい。

 

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