ポーランド外国投資公社(PAIZ)

これは田口研究室が管理するPAIZ紹介のページです


中欧の心 優しい自然


 ポーランドの語源には「平原」、「畑」といった意味がありますが、その名のとおり美しい森と平原の広がる国です。国土は日本の本州と北海道をあわせたほどの広さで、その75パーセントは標高200メートル以下、標高300メートル以下の面積は91パーセントになります。
 ポーランドは緯度的には樺太とほぼ同じ所に位置していますが、暖流と大陸性気候の影響で、一年を通して比較的過ごしやすいといえるでしょう。ポーランドの夏は涼しくカラッとしています。一方、冬は日照時間が短いものの、パウダースノーの雪景色が美しく、空気は澄んでいます。
 ワルシャワに到着すると、近代的な空港ターミナルビルや、建設中の高層ビルに目を奪われます。しかし、都市を一歩離れると、そこには心を癒やしてくれるようなのどかな田園風景が広がっていることに気づくでしょう。国土の大部分は広い平地・なだらかな丘陵地ですが、緯度に沿っていくつかの地帯に分けられます。北からバルト海沿岸地帯・湖沼地帯・中央ポーランド低地があり、南部の山岳地帯には、1000メートル、2000メートル級の山々が連なっています。それぞれの地域は、特徴ある景観を持っています。

緑豊かな首都 ワルシャワ

 ワルシャワの高いビルからぐるっと市内を見渡すと、あちらこちらに大きな森のような公園が見えます。ワルシャワは世界でも有数の、公園の占める割合が大きい都市です。18世紀にポーランド最後の王によって造られたワジェンキ公園では、王が世界中から集めた様々な種類の木々が豊かな森をつくり、夏の離宮として使われた美しいワジェンキ宮殿を包み込んでいます。この公園の中にあるショパンの像の下では、夏の間、野外ピアノコンサートが開催されます。咲き乱れるバラの花の香りや、風にそよぐ木の葉のざわめきとともに聞くピアノの音色は、ワルシャワでしか味わうことのできない、豊かな時の流れと伝統の厚みを感じさせてくれます。

美しい山岳地帯「タトリ山地」

 ポーランド南端、スロバキアとの国境にまたがって、「タトリ山地」があります。東西約55キロメートル、南北約17キロメートルの狭い地域ながら、ここにはアルプスの景色が凝縮されています。ごつごつした山の岩肌、そこから流れ出る清らかな小川、そして表情豊かな湖、可憐に咲く高山植物等、タトリは自然の宝庫・秘境です。ちなみにタトリ山地の最高峰リースィ(海抜2499メートル)はポーランドの最高峰でもあります。
 このあたり一帯は国立自然公園に指定されており、車の乗り入れは禁止されています。麓の入り口からは、森のゆるやかな坂道を歩くか、乗り合い馬車を利用します。馬車に揺られること約30分、目の前には神秘的な湖「モルスキェ・オコ」(「海の瞳」)が姿をあらわします。さらに急な登山道を登ると、魅惑的な名前の秘湖「チャルニィ・スタッフ」(「黒い池」)があります。ここから見下す「モルスキエ・オコ」はとても美しいものです。他にも、ホホウフ谷や五ヶ池谷など、見所は尽きません。さわやかな鳥の鳴き声と川のせせらぎ、緑と花々の香りは旅人の心と体に活力を与えてくれます。

 タトリ山麓の高原都市ザコパネは、国内最大の観光保養地として年間300万人を超える人々が訪れます。山歩き・登山・キャンプのゲートウェイとして、冬はスキーのメッカとして、街は1年中観光客でにぎわっています。ここはまた、文学者や芸術家に愛されてきた町でもあり、古くからヨーロッパの芸術家たちの保養と交流の場にもなってきました。
 ザコパネでは、分厚い木材を組み合わせる独特な工法で造られたザコパネ建築や、山の言葉を話すグラーレ(山人)たちの生活や民俗にふれることができ、他の都市とは全く違ったポーランドの一面を知ることができます。
「タトリ山地」の他、ビェシチャディ山系、ベスキッド山系、カルノコシュ山系.なども、なだらかな山系として自然愛好家に好まれている所です。

ヨーロッパの緑の肺

 ポーランド東北部の湖沼地帯(ポモージェ湖沼地帯・マズーリ湖沼地帯等)には、広がる森の中に宝石のようにちりばめられた数千もの湖があります。また、鹿、ヨーロッパバイソン、ビーバーなど野生動物や鳥の楽園です。ここは、ほとんど人の手が加えられていない自然が残っていることから、「ヨーロッパの緑の肺」とよばれ、国際的保護地域に指定されています。いくつかの湖は運河や水路でつながっていて、船やカヌーで湖めぐりをすることができます。ヨット、釣り、バードウォッチングに興じながら、ゆったりとしたときの流れを楽しむことができます。

バルト海沿岸地帯

 ポーランドは、中欧で唯一海に面した国で、美しい半島、良港を持っています。バルト海沿岸地域には数々の保養所があります。ここはまた子ども達のサマーキャンプ地として人気スポットです。グダンスクの隣の都市グディニアは、毎年映画祭が開催されることでも有名ですが、春から夏にかけては国際ヨットレースも開かれます。雄大な海と白い砂浜の開放的な風景は、大人から子どもまで親しまれています。

自然と動物と人々と

 ポーランドはまた、動物の宝庫でもあります。森や湖沼地帯、山間部には野生の馬、鹿、熊、おおやまねこ、ビーバーなど、多くの動物が生息しています。とりわけ、ヨーロッパ・バイソンとコウノトリは、ポーランドを代表する動物たちです。  ポーランド東部、ベラルーシとの国境をまたいで広がるビャウォヴィエスキ国立自然公園には、絶滅の危機にあったヨーロッパ・バイソンが200頭以上生息しています。ここには、中央ヨーロッパで唯一現存する原生林があり、ユネスコの世界遺産にも指定されています。
 ポーランド南東部に行くと、電信柱の上や家の煙突の上につくられたコウノトリの巣を見かけることがあります。コウノトリは保護鳥に指定されているので、たとえ家の煙突に巣ができたとしても取り除くことはできません。ポーランドに生息しているのは「赤嘴コウノトリ」で、アフリカから毎年春に渡ってきます。世界の赤嘴コウノトリの三割以上がポーランドに生息しているといわれています。  ポーランドのとりわけ南部では、かつて大規模な環境破壊が進んでしまった時期がありました。現在、全国には数々の国立自然公園があり、現在は官民一体となって環境保護・自然保護に取り組んでいます。

豊かな自然と時の流れと…

 ポーランドの自然は、迫りくる岩壁があるわけでもなく、しぶきをあげる瀑布があるわけでもなく、あくまでも優しく人々を包み込んでくれます。動乱の時代、国を追われたポーランド人がつねに夢見た約束の地は、この母のようにあたたかく包み込むポーランドの優しい自然でした。とうとうと流れるヴィスワ川のほとりにたたずむとき、またどこまでも平らな地平線に沈む夕日をずっと眺めるとき、この自然こそポーランド人にとって安住の地だと知ることができるのです。